ポップン(15多め)を中心に扱う自己満足ブログです。シグフィリとかリアシグとか大体Σ様ばっかり描いていると思われます。自己設定・解釈が顕著なzektbachについての文章も少々。
キリ番は自己申告で。(健全志向・管理人の描けそうなジャンルでお願いします)
なおこのサイトは二次創作サイトであり、製作者様とは一切関係がありません。
ご理解の上で当ブログを閲覧するようにお願いします。
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遺跡に向かう道中、港町に寄った二人は暇をつぶしに海岸を訪れた。リアンは∑の思考、行動のあり方について疑問を抱き……
[∑、リアン]
1/fの
閑散とした浜辺に、二人はいた。素数の女神と、超越者。陽射しはしっかりしているが、吹き付ける潮風は冷たさをはらみ、少し肌寒い。二人して、ぼうっと、沖合いを眺めている。
超越者は、時折人の背ほどある、足元程度に波しぶきの打つ岩の上に腰掛け、女神は、海水に濡れないようローブの裾を少し持ち上げながら波打ち際に立っている。渚と同じ色をした、コバルトブルーの虹彩。潮風に吹かれて細い髪が、電気を含みながらたなびき、ぱちりぱちりと火花を上げる。
超越者、リアンはルフィナの意思と刻印を受けた後、そのルフィナの叡智の結晶たる意識複合体、素数の女神である∑とともに神殿を後にした。現在は近辺の港町にとどまり、大陸に向かう船が訪れるのを待っている。それまでの幾日かの日々で、暇をつぶしにはこうやって二人で海岸を訪れたりしているのだ。海を見るのは、好きだ。波音の持つ、あの音響は聞いていて飽きない。
偉大な使命を前にして、何も動かずに待つことに少し気が焦らないこともなかったが、急いでどうこうできるものでもないし、ここは少し悠長に構えさせてもらうことにしようとリアンは判断した。
舟が来るまでは辺境の港町の物見遊山といったところか。女神と物見遊山、悪くない。ちらとリアンは∑の方に目をやる。
素数の女神は合いも変わらず、無心に海を眺め続けている。一体その瞳は何を映しているのだろう。その透明な眼差しからは何も読み取ることが出来なかった。
――リアンの頭にはとある疑問があった。それは∑としばし行動をともにすることで、浮かんだものだった。ルフィナの叡智の結晶たる素数の女神。彼女は自らの事を『意識複合体』と名乗った。なるほど、ルフィナの叡智と人格を搭載した媒体。それが彼女なのだろう。
しかし――彼女自体の内面的な仕組みについてはどうなってるのだろうか。ここ暫くの間彼女を観察してみたが、人格的なものが全く希薄に感じられる。振る舞いこそは人間らしいものの、彼女自身の自己というものが全くつかめないのだ。道中彼女と他愛もないやりとりをしていると、どこかちぐはぐなものを感じた。――それでも、彼にとってはひどく楽しい時に思えたのだが。
神殿を後にして、この町に着くまでの道中、道すがら∑が、自分の知識にない地上の事象のことについて尋ねたり、また暇さえあれば互いに数論について語り合ったりした。彼女の装具の精巧な作りと、その構成物質の思いがけない構成と解説する彼女の説明に伺える、ルフィナの高度な文明に嘆息したこともあれば、 眠りに入る前、リアンが自身の生い立ちについてそれとなく語る言葉を、∑が静かに聞いたりもしていた。
リアンは思う。彼女はルフィナの賢者達の意識によって今思考し、行動を起こしている。しかし、それならば、彼女自身の自意識というものは一体何処にあるのだろうか?と。
素数の女神は無表情のまま、ただ渚を見つめている。無表情、といっても知的活動の喜びを忘れかけてた堅苦しい学者の見せる、実につまらなそうな顔ではない。そういった類ではなく、屈託のない、といったやつだろうか。自我の育っていない生まれたばかりの乳児の見せるあの半ば哲学めいたともいえる神妙な顔と 似ている。
いや、そもそもそんなものは存在しないのではないか。果たして彼女はただの人工知能――。ルフィナのプログラムでしかないのだろうか。
――ならば今、私と過ごしている、この時間すらも、虚偽に過ぎないというのだろうか。
そう思うと、何故かひどく胸がつかえる感じがした。ざぶり、と音を立て砕けたつめたい波しぶきの欠片が一際大きく跳ね上がり、リアンの頬を濡らした。――冷たい。
一際大きい波しぶきの音に反応した∑が、こちらの方へと見合わせる。視線と視線が交差する。
――ああ、彼女はいったい、何を思って、渚を眺めているのだろう。
彼女は一体、何を思って、私を――。
波の打つ音が、幾度か響く。二人の沈黙を交えた、水面の上下運動の音響。ある種の変動波と、反比例したゆらぎが、二人の間に響く。超越者を見つめる女神のその視線は、大丈夫か?と尋ねている。
腕で頬に付いた海水をぐいと拭い、その質疑に答える代わりにリアンは一つの質問を投げかける。
「海が、お好きなのですか?先程からずっと眺めておられますが……」
素数の女神が、二、三度瞬きをする。同じ数だけ、波が砕ける音がして、質問への答えがその唇からつむぎだされた。
「お主が言っておるのだから、きっと、そうなのではないかな。何故こんなにもこの海から目が放せず、眺めてしまうのかは正直我には解らぬ。ルフィナは海が好きだったのかもしれぬな。実際のところ『好き』とか『好む』とかそういった概念が体験的な意味としては我には解らないのだよ。」
流れるように、何の感情的な濁りも無い抑揚で∑は言う。大体彼女はこういった喋り方をするのだが、今はその言葉が、じわりとリアンの胸を痛ませた。
「理解して、みたいですか?」
「判らぬな。しかし我はルフィナの叡智の結晶体、学者精神の集う好奇心のかたまりともいえる。興味をひかれないということは、ないな」
そう言って、∑はリアンの方を再び振り返り、ふと笑ってみせた。実に美しい笑顔だった。が、リアンはその笑顔に少し違和感を覚えた。元々彼女の目鼻立ち からして実に精巧な作りをしているわけで、そんな美人が微笑めばそりゃあ大層美しいだろうといったところだが、何かが違う、何かが足りない。なんというか、笑顔の持つものとは違うカテゴリの美しさなのだ。まるで何一つ矛盾せず調和を保つ完全な一式の証明に出会ったときのようだ。どこにも付け入る隙のない美しさなのだ。それはそれで、大変心惹かれるものではあるが……
しかし、笑顔というものはこれではいけない。彼の生身の心がそう呟く。
「分かりました、それでは実践してみましょう。――まずは」
そういった後、超越者はにっこりと大きく笑う。
「笑顔について。そういった感情をもったときは、ひとは笑うものなのです。」
例示のための作り笑いではなかった。本当に、自然に笑みがこぼれてしまったのだ。
「笑うこととは、理論ではないのです。理論的に組み立てられないこともないですが『にんげん』である以上それはナンセンスといったものです」
そして、自らの胸にそっと手を置いて――。「ここです」
「ここで、笑うのです」
何故だろう。この目の前のひとが、自分達と同じように笑うところを、たまらなく見てみたい。
「笑うという感情の定義は知っていたつもりだったが、それを自分に適用しようとは思っても見なかったのだ。」
ふーむとややも唸り、神妙な面持ちで呟く女神。超越者の言葉を、意外に思ったようだ。するとしばらく口元をもごもごさせて、そしてそのままの表情で頬の辺りを手でつまんだり、こねくり回したりし始めた。その顔は真剣そのものである。
しばらくの間、女神は真剣に己の顔輪筋と格闘していた。その姿は申し訳ないがあまりにもシュール――、いやそんなことを思ってはいけない。彼女は真剣なのだ。リアンは自らの道徳心により自分の心を制した。
「慣れていないと、恣意的に顔の筋肉を緩ませるのは難しいものだな」
そういって、∑はリアンの方を振り返り、自分の両頬を指でつまみあげ、しばらくその姿勢をとどめてから、ぱっと手を離す。その顔は一貫して真面目くさった面持ちである。ちなみに、超越者は己の腹筋と必死で格闘している所だった。
「しかし、何故このような提案をするのだ、超越者?」
真剣な面持ちから一転、心底不思議そうな顔で女神は尋ねる。目を真ん丸くさせ、口を三角にしながら、尋ねている。とうとう堪えきれずリアンは思いっきり吹き出した。
ルフィナ種の広大な叡智の化身である素数の女神。そんな事を考えないと、本当にこの人はなんだか小さな子供のような人だ。だから、きっと、この人には、子供のような屈託のない笑顔が似合うだろうなぁ。そう思っただけのことだ。
なかなか止まらない超越者の笑い声と、快い波の音が、海岸に響く。この空間の、ゆらぎが、彼女の内側にあるものをゆらめかせ、変えてくれたらいいなぁ。そう願った。1/fのゆらぎ。
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嵐山 凪生(ナギオ)
性別:
女性
自己紹介:
どこにでもいるΣ様が大好きなオタク
好きなゲーム:ポップン、ユビート、FF5,6,7、聖剣LOM、ゆめにっき
好きキャラ(サイト内でよく取り扱う人達):Σさん、フィリ、オオカミボーイ、サトウさんはなちゃんししゃも、リアン、マルクト、鴨川研究員、極卒君、姫子お嬢様
・アニメーターの千羽由利子氏に最近熱を上げているようです
・ゼクトバム2のリアシグ充っぷりにノックアウトされてるようです
・SS倉庫を作りたいと考えてはや半年が経過しようとしていまs
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