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ポップン(15多め)を中心に扱う自己満足ブログです。シグフィリとかリアシグとか大体Σ様ばっかり描いていると思われます。自己設定・解釈が顕著なzektbachについての文章も少々。 キリ番は自己申告で。(健全志向・管理人の描けそうなジャンルでお願いします) なおこのサイトは二次創作サイトであり、製作者様とは一切関係がありません。 ご理解の上で当ブログを閲覧するようにお願いします。
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リアシグ話序章・前編。

七つの難問を解き明かし、超越者となったリアン。女神Σの啓示を受け――





平面で交わる、二つの





   全ての難問を解き終えた、稀代の知者の前に素数の女神が凛然と佇んでいた。

   リアンが最後の証明を終えたその瞬間、視界は白く眩しい光に包まれた。あまりの光量に目を開けることが出来ず、リアンは固く目をつぶりながら、何か耳の奥で反響する高い音を聞き取る。閉じた瞼の裏に、様々の幻視が浮かんでは流れていくのを見た。それはせわしなく瞬き、映像とフラッシュと閃光が目まぐるしい速度で網膜に焼きつく。その凄まじい勢いに今にも眩暈を起こしそうだと言うのに、すでにつぶってしまったその目は閉じることもかなわない。脳内が反転し、揺さぶられるような感覚に少年はひたすら耐え続けるよりなかった。



  そして、どれくらい経っただろう――。光の勢いが弱まり、可視できるようになったその視界に、麗しき御姿が映っていたのだ。腕を伸ばせば触れることが出来そうなほどの、距離だった。

   肩元のみが青く染まった純白の衣を身にまとい、その白さに劣らぬほどあかるくしろい乳白色の肌。身につけている装具は、何か特殊な鉱石で出来ているように思えた。何より目を引いたのは、白金色した、雷光の髪だった。時折鮮やかな色に瞬いては、それは火花を放つ。

  ほぼ無意識に、リアンは女神の前にひざまずく。体が自然とそう動いていたのだ。そうすると、女神の声が流れてきた。それは耳で聞き取るのではなくて脳内に直接、音声が流れてくるのであった。女神の唇は閉じられたままで、彫刻のごとく端然とした表情を保ったままである。今や超越者となった少年は再び、厳かに瞼を閉じた。



 ――女神は語った。自らの存在意義と古代から受け継がれしルフィナの意思。リアンがここに訪れた理由と刻印の内にいにしえより編みこまれていたルフィナの計画。

   リアンもその声に応えた。難問を解き明かした今の思いと、この場に立つことが出来た喜びとそして――。
   しかし女神は、超越者が口にした最後の言葉には一瞬、その端然とした顔に、わずかに戸惑ったかのような色を見せたのだった――。




   目を開くと、自分の体が簡素なマットと毛布の間に横たえられているのに、リアンは気づいた。荷物の中に携帯していた寝具だった。わずかに動かした指先は毛布からはみだし、冷たく滑らかな石床の感触が、伝わる。その冷たさに超越者の頭はわずかに覚醒し――それから、どうして私はこうしているのだろう、そう思ったときまどろみが一瞬にして消え去った。銀の跳ね髪を揺らしながら、慌てて身を起こしたその視界に映ったのは、傍らの踊り場に、石像のごとく凛と佇む、素数の女神。


――――


  ――女神の啓示を受けたあと、リアンが再び目を開いたとき、素数の女神、Σが自分を見下ろしているのを見た。仰ぎ見る、女神の唇が動き出す。

  「この度はご苦労であった、超越者リアンよ。度重なる難問を連続して解くのは、流石の知者とはいえさぞ大変だったであろう」
それはねぎらいの言葉だった。今度は直接、聴覚を通じて渡る『声』として聞き取れた。素数の女神はその口元に、たおやかな笑みを、浮かべる。

  「永きに渡る素数の世界の探索、さぞかし疲れたであろう。まずはここで体制を整えてから出発するが良い。」

   最後に眠ったのはいつだったろうか。そういえば最後の証明の佳境から、興奮と集中に時を忘れ体を休めていない。女神の言葉にそんな事を思い出していると――急に足元の感覚がなくなり、視界がゆっくりと暗くなり狭められる。そして超越者リアンはその場に倒れ伏したのだった。まどろみの闇に落ち、瞼が閉じられる寸前、素数の女神のその青の目と、一瞬目が合った。


――――


  「悪いが、荷物を少し物色した。ここには寝具などは何もないからな――」

  「も、申し訳ありません!」

   布団に寝かされている、と言うことは自分の体を目の前のこの女神に運ばせたのか。叡智の化身に、なんという事をさせているのだ。

   何も返さずただそこに佇んでいる女神の足元には、白く輝くタイルが敷き詰められている。背景も同様の銀の輝きを携えた白で、女神が身にまとう白金色の光に照らされ、淡く乱反射して煌く。準備が出来次第、ここを出ると良い。帰り方は、分かるな?尋ねる女神に超越者は頷いて返す。どれくらい眠っていたのかは屋内であるここでは分からないが、ずいぶんと体力も回復している。すぐにでもここを後にすることはできるだろう。ただ。

  「ここを出る前に、少しここを眺めさせてください。記憶に、焼き付けたいのです」

  「あまりにも、美しいので――」

   白を基調とした空間には、数々の石像が並んでいる。それらはちゃんとした数の理に基づいた、意味づけの上に配置されている。数列のように規則正しく並ぶ石柱。柱の円周、及び石畳のひとつひとつの比は、より完全に近い形にしようと緻密な計算を持って作られている。壁や天井には、複雑な曲線と数式、素数分布のグラフ。タイルには幾何学模様あるいは数列を模した細かな彫刻が施されていて、そしてそれら全てが彼の通ってきた小道の意味を表す地図――定理となっていた。ゼータの小道。

   リアンの脳裏では澄み切った数の世界が目の前に広がり、ただ、ただ静けさを持って瞬く。素数定理の世界が、ここに広がっている。その美しさにただ圧倒され時折視界が滲みすらした。吐息が小さく震え空気を振動させる。

   素数の女神はただ、その様子を見つめていた。その表情は、何の色も表していないように思える。静かな空間にいかずちの頭髪が放つ火花の音が、反響して響く。その音はリアンの鼓膜に響き、時折彼を振り返らせた。

  ――この方は、私が去ってしまった後どうするのだろう。また一人でここにいるのだろうか。

   重なった視線に、超越者はふと、そんなことを考えた。瞬きをして、見つめ返す青色の目。女神のその表情からは、何の意思も感情も読み取れない気がした。無表情なのではあるが、どこか人間とは異質のものであるような気がすると、直感的に思った。それは彼女が女神であり、意識複合体であるから故なのであろうか。

  ――この方は、気の遠くなるような時間、今まで私という超越者の存在が現れる、そのときのためにずっとここに存在し――。
 それから、また、一人で――。

   千年とはいったいどれ位の時間なのであろうか。その長い時間を彼女は何を思って過ごしていたのだろうか。だがあくまでそれは感覚的なものだから理解をすることは出来ない。退屈とは、本当に嫌なものですからね、そう彼女に告げたときの、その表情が妙に頭に焼き付いている。何だか、困ったような、理解できないというような表情をしていた。



  「ルフィナの叡智、しかと目に焼き付けておいたか?」

  「はい。決して忘れません。この美しい世界を」

  「それから超越者――。出発の前に一つ。」

   女神のその双眸に、凛然とした輝きが宿る。

  「お主は我が難問を見事乗り越え、超越者となった。ルフィナがその歴史、願い、技術を持ってして、すべてを託した存在」

   その声は静かさと厳格さに満ちていた。まるで一切の妥協も許さぬ証明のごとく。自らの雷杖を超越者の眼前に突きつける。

  「今よりルフィナの全権は、お主の手に委ねられた。この事がどんなに偉大で、責任の重い事であるか分かるな?」

   超越者は、厳かに頷く。それから顔を上げて女神を真っ直ぐに見据える。女神の雷光は、今や勢いを強め髪から流れ、体を纏っていた。瞳と瞳が、交差しあう。

  「仰せの通りに。ルフィナの意思、しかと必ず受け継ぎ、成し遂げて見せます」

   その言葉に女神は首肯すると、元の姿勢に戻り静かに目を閉じそのまま佇んだ。まるで彼女とその周りの空気だけが時を止めてしまったかのようだった。このまま石像にでもなってしまいそうな気がした。再び脳内に直接、女神からの音声情報が流れる。



  (さあ、行くが良い、超越者よ。ルフィナの加護によりお主が災いから、守られるよう)

  「あ、待って下さい!」

  (どうした、まさか今更怖気づいたか?)

  「違います、いえ、その――早速なんですがそのルフィナから授けられた特権を使わせて頂けますか?」

  ああ、と女神が再び目を開き、声によって肯定の返事をする。彼女を纏う空気の、時が再び動き出した。

  「まずは――この神殿から出る事にしましょう」


  「私と共に、ついてきて下さいませんか?」


   超越者の懇願の言葉の残響に、それと火花の音が、ばちんと高く響いた。





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