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ポップン(15多め)を中心に扱う自己満足ブログです。シグフィリとかリアシグとか大体Σ様ばっかり描いていると思われます。自己設定・解釈が顕著なzektbachについての文章も少々。 キリ番は自己申告で。(健全志向・管理人の描けそうなジャンルでお願いします) なおこのサイトは二次創作サイトであり、製作者様とは一切関係がありません。 ご理解の上で当ブログを閲覧するようにお願いします。
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リアシグ文序章・後編。

ルフィナの意思を告いだ超越者がその特権により下した命は、意外なものだった。











  偉容を誇る巨大な神殿の扉を閉じると、二人は長い廊下に出た。壁に使われている素材たる石が、女神の雷光と、超越者の手にするランプの光を反射して、煌々とした深青の光を放つ。青々とした光に包まれ、まるで海の中にいるようだ。そういえば、この神殿は海底にあるのだった。ひょっとしたら海中の風景を模しているのかもしれない。

 「外に出るのは初めてだ。ルフィナの下した新しき命は、予想外なものだったな」

   呟く女神。その横顔は青の色に染められて、元来の青目がますます深いものに見えた。

 「無理矢理な形で、慣れない外に出してしまって申し訳ありません。何か不便な事はありませんか?」

 「いや、何も問題は無い。お主たちの行動、文化については弊害の無い程度に心得ているつもりだ」

   そう呟きながら、歩き出す女神の体躯はまるで、がしゃんがしゃんという音が聞こえてきそうなほどに、不自然に揺れ動いていた。

 「……右手と右足が同時に出てますよ」

   そういえばその青の下衣から足が覗かせるところを見たことが無い。履き物はお召しになっているのだろうか。いや、足――?

 「明確に言えば、これは足では無いな。中は空洞だ」

   女神はそう呟き、体を折って少しローブの裾をつまみ上げる。失礼します、と呟き超越者は屈みこみながら覗き込む。

   中身は、青色をした空虚だった。何かオーロラのような青い光のベールが見えるが、質感の無いものであることが見て取れた。遠慮がちに自らも裾をつまみ、引いた手に伝った感触には布と物とが引っかかる手ごたえが感じられなかった。

   リアンは、目の前の現象に驚きを覚える。そして、これより先はどうなっているのか?という疑問に突き動かされて、さらにローブをたくしあげる。そして膝元までたくしあげたところで、今自分のなしている行動の意味に気づき――。

 「……すみません」

   真っ赤になって俯き、呟く。素数の女神は怒るでも無しにただ静かに佇んでいる。かえって今の言葉を不思議に思っているかのように思えた。その対応にますますリアンは混乱する。彼女は恐らく、今自分がされた行為の意味を理解していない。

   長い廊下を渡りきり、階段に辿り着くまで、しばらく目が合わせられなかった。


 
   ひんやりとした石畳の階段を、二人は登っていく。階段は、神殿の内装と同じく真っ白く輝く石畳で出来たものだった。大理石のように固く、滑らかな質感をしている。様々な数の秘術がディテールに施されているのも同じだった。階段一つ一つの縦横の比とその段数、一段ごとの高さ、地上への距離と全ての数値が意味のある数値となっているのだと今やリアンは理解していた。それらは幾何的、機能的、宗教的と様々な意味があって、しかしちゃんと互いの秩序と相互しあいながら、今なおルフィナの叡智を変わることなく留めている。数式に宿したルフィナの声。永遠の、記録。



   絶えず続く階段を登りながら、女神が呟く。

 「お主は本当に興味深いな、超越者。見ていて実に面白い」

 「え?」

   女神の告げる、唐突の一言。超越者は、目を丸くして女神に顔を向けた。

 「こうしてずっと眺めているが、見ていて飽きない。様々な反応が見えて面白いぞ」

   そういって超越者の瞳をまじまじと覗き込む。気のせいだろうか、頬が、熱い。

 「か、からかわないでください!」

 「失礼」

   女神は一言そう呟き手の平を広げ、悪かった、との仕草をする。

 「何せ我が神殿に初めて訪れた、生身の人間だからな」

 「既にその役目を終えたとはいえ、我が内にある意識は本来あらゆるものに興味を抱き、理解しようとする研究精神を持つものがほとんどだ。本能的につい、な」

   そう言うと、女神はおもむろに超越者の少し堅い銀の跳ね髪を、ぐしゃぐしゃと撫でる。

 「なるほど人間の髪――硬質蛋白質で構成された繊維とはこういう質感なのか」

   予想外の出来事に、超越者は一瞬身をすくめた。その動きは女神にも伝わったらしい。

 「む、不快に思ったか?すまなかった」

 「いえ、大丈夫です、ただちょっと予想外の出来事に驚いただけで……」

   頬の火照りは、いまや確信的なものとなっていた。



 「我の頭髪に当たる繊維は、特殊な鉱石を加工したもので作られている」

 「鉱石は伝導性が非常に高く、電気を通すと繊維の一本一本が光を含み、浮き上がる。電気を通さないと――。超越者、ランプを持つ手を上に上げてくれ」

   瞬間、女神の髪から放たれし光が消える。暗くなった階段は、ランプのぼんやりとした光だけで照らされる。照らし出した女神の髪は、彩度の落とされた黒みがかった、灰色。

 「電気を通していない状態では、その鉱石は本来黒っぽいのだ」

   再び髪を元の状態に戻した。階段が、ふたたび金色の光で満たされる。女神の一連の解説を、超越者は感心して聞き入っていた。説明は続き、この鉱石は彼女の装具にも原料として使われているらしく、その加工方法は――。



   長らく歩き続けるうちに、灰白の石畳の列に、少しずつ苔の緑が混じり始める。端の欠けやうっすらと入る亀裂、風化の跡も目立ち始めていよいよ地上が近いのだという事が分かる。

   長時間の間階段登り続けていた超越者は今、割とグロッキーである。行きはよいよい帰りは怖い、か。隣に佇む女神をちらと見ると、相も変わらずの無表情を保っている。この人は、疲れたりしないのだろうか。いやそもそも足が無いから痛んだりしないのかもしれない。

   こうしてしばらくの間共に時を過ごしているが、未だに彼女のことがよく掴めない。謎めいているのは、リスタチアの根源より彼女の頭の中なのかもしれない。疲れきった頭で、そんな事を考える。前方から差し込んで来る光は、だんだんと増していった。



   しばらく振りの地上へと出ると、目の前には照明とは比較にならない光量の光が広がる。環礁に囲まれた小さな島はせいぜい普通の街にある広場程度の広さしかなく、この場に二人以外は何も存在していない。小規模な草原と、その中から時折ごろごろした岩や痩せた土が露出している。海辺の陽光に照らされて、女神が眩しそうに目を細めているのをリアンは見ていた。初めて見る、解き解かれたような表情だった。海の風が強く吹き付けるが、日光は強く肌を焼くようである。眩しそうにしながらもその目はまっすぐに空を捉えて離さない。

  そうして彼女は初めて訪れた地上の世界を見渡すのだった。いかにも眩しそうに。



  深遠な、素数の世界に頭を垂れ記憶に刻み、後にする超越者と。

  広大な、地上を踏みしめ頭を目いっぱいに持ち上げ、目の前に広がる風景を見渡そうとする女神と。

  二つの、白く眩しい世界の境を越えて。

  眩しいですね、そうだな、等と呟き合いながら、二人は長いこと空を眺めているのであった。



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